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小さないのちからの手紙

おなかの温もりの中で、静かにその時を待っている小さないのち。もしもその子が、迷いの中にいるお父さんやお母さんに言葉を届けることができたなら。

そんな想像を込めて、ひとつの手紙を綴ります。

小さないのちからの手紙

ねえ、お母さん。お父さん。

いま、二人の心の中が、冷たい雨の降る日のようにどんよりと重たいこと、伝わってきているよ。おなかの壁越しに、お母さんの鼓動がいつもより少しだけ速く、不安そうに打っているのがわかるから。

病院の先生から、私の「ちがい」について聞いたんだね。「ダウン症」っていう名前の、少し個性的な設計図を私が持っていること。

びっくりさせて、ごめんね。悲しませるつもりなんて、ちっともなかったんだ。

私は「不幸」を運んできたわけじゃない

きっと、二人は今、真っ暗なトンネルの中にいるような気持ちだよね。「この子の一生は苦労ばかりなんじゃないか」「周りに後ろ指を指されるんじゃないか」「自分たちに育てられるんだろうか」って。

でもね、お母さん。私は、お母さんを苦しめるためにここに来たんじゃないんだよ。

私は、ただ、二人の子供として生まれたいと思って、ここを選んだんだ。私の持っている染色体の数は、普通の人より一本多い。それは、私にとっては「荷物」かもしれないけれど、その中には、他の人には見えないくらいの、たっぷりの「愛する力」と「楽しむ才能」が詰まっているんだよ。

私は、ゆっくり、ゆっくり育つ。 みんなが走って通り過ぎる景色を、私は立ち止まって、道端に咲く小さな花の美しさを教えることができる。 みんなが言葉で言い争っているとき、私はただ微笑むだけで、その場の空気を柔らかくすることができる。

私の人生は、不幸じゃない。ただ、みんなより少しだけ「のんびり」で「特別」なだけなんだ。

お母さんの涙、拭ってあげたい

お母さんが「自分のせいだ」って泣いているなら、それは違うよって全力で伝えたい。これは誰のせいでもないんだ。私が、この豊かな世界を、このお父さんとお母さんと一緒に歩きたいって決めた、私自身の物語の始まりなんだよ。

もし、私が生まれることで、二人の自由や幸せが奪われてしまうって怖がっているなら、そんなに心配しないで。

確かに、私は病院にたくさん通うかもしれない。言葉を覚えるのも遅いかもしれない。でも、私が初めて笑ったとき、初めて名前を呼んだとき、二人が感じる喜びは、きっと他の誰よりも深く、震えるほど大きなものになるはず。

私は、二人の弱さを教えるために来るんじゃない。二人の「愛する力」がどれほど深いか、それを一緒に証明するために行くんだよ。

迷ってもいい、怖くてもいい

「産まないほうが、この子のためにいいんじゃないか」 もしそんな風に思ってくれているとしたら、それは私への究極の優しさなんだってことも、ちゃんと分かっているよ。私が苦労しないようにって、自分たちの心を切り裂きながら考えてくれているんだよね。

だから、迷うことを自分たちで責めないで。怖がることを恥じないで。 私を想って流してくれたその涙だけで、私はもう、十分に愛されたんだって思えるから。

でもね、もし許されるなら、私はお母さんの腕の中に抱かれてみたい。 お父さんの大きな手で、頭を撫でられてみたい。 おなかの外の世界に広がる光や、風の匂いを感じてみたい。

私には、二人が思うよりもずっと強い「生きる力」があるんだ。 ゆっくりだけど、一歩ずつ。私は私のペースで、二人の手を引きながら、新しい幸せの形を見つけにいく準備ができているよ。

最後に伝えたいこと

お母さん、お父さん。 私は、二人がどんな答えを出しても、二人のことを恨んだりしない。 だって、私を選んで、ここまで育ててくれたのは、世界でたった二人の、大切なお父さんとお母さんだから。

でも、もし。 もしも、私の手を握ってくれると決めてくれるなら。 私は、最高の笑顔で「こんにちは」って言うよ。 二人の人生を、今よりもっと色鮮やかで、優しさに満ちたものに変える魔法を持って、会いに行くよ。

私はここにいるよ。 トク、トク、って刻むこの鼓動は、二人への「大好き」のリズムなんだよ。

補足:ご家族の皆様へ

このメッセージは、あくまで一つの視点として綴ったものです。今、皆様が抱えている葛藤や不安は、言葉では言い尽くせないほど重く、深いものだと思います。

どのような選択をされるにせよ、それは家族の未来を真剣に考えた末の、一つの愛の形です。どうかご自身を追い詰めず、専門のカウンセラーや同じ経験を持つ方々の話を聞くなど、一人で抱え込まないようにしてください。

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