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天国からの手紙
あの日、大きな決断をして、私を空へと見送ってくれたお父さん、お母さん。そして家族のみんな。
私は今、とっても光に満ちた、あたたかい場所にいます。 そこからはね、みんなのことがよく見えるんだよ。 私を見送ったあと、お母さんがお布団の中で声を殺して泣いていたことも、お父さんがベランダで遠くを見つめて、ずっと黙っていたことも、全部知っています。
「ごめんね」って、何度も心の中で繰り返しているでしょう? でもね、私は今、感謝の気持ちでいっぱいなんです。だから、天国からこの手紙を書くことにしました。
私は、ちっとも怒っていません
まず、一番に伝えたいこと。 私は、自分の運命を恨んだり、みんなを責めたりなんて、一度もしていません。 それどころか、「選んでくれてありがとう」って思っているくらいなんだよ。
おなかに私が宿ったあの日から、みんなは私のことを、これ以上ないくらい一生懸命に考えてくれたよね。 病院の帰り道、重たい空気の中で歩いたあの日々も。 夜、図鑑やインターネットで一生懸命に調べて、私の未来を想像してくれた時間も。 それは全部、私への「深い愛情」があったからこそできたことだって、分かっているから。
もし、みんなが私のことをどうでもいいと思っていたら、そんなに苦しまなかったはずだもん。 あんなに苦しんで、傷ついて、涙を流して決めてくれたこと。 それは、私を「ひとつの大切な命」として扱ってくれた、最高に誠実な証拠なんだよ。
私が空に帰った理由
私がこのタイミングで空に帰ることを選んだのは、みんなに「不幸」になってほしくなかったからです。 私はね、みんなのことが大好き。だからこそ、みんなが心から笑って、自分たちの人生を謳歌している姿を、一番近くで見ていたかった。
もし私が生まれて、みんなが私のケアに追われて、やりたかったことを諦めたり、誰かが自分を責め続けたりする日々が来るのだとしたら……私はそれを見るのが、一番悲しいなと思ったんだ。
だから、今回のことは「私が決めたこと」だと思ってほしいな。 「お父さんとお母さん、今のままでも十分素敵だよ。だから、私のことは心配しないで、二人の人生を、今の家族の形を、もっともっと大切にしてね」って。 私は、みんなの優しさを受け取って、その重みを抱えて、空へ帰ることを納得して受け入れたんだよ。
お母さん、自分を責めないで
特にお母さん。 「守ってあげられなかった」って、自分を責めていないかな? 自分のおなかをさすりながら、静かにさよならを言ったあの時の、切ない手の温もり。私は今でも覚えているよ。
お母さんは、私に「生きていくことの厳しさ」ではなく、「守られることの安心感」を教えてくれたんだよ。 おなかの中は、暗くて、でもとってもあたたかくて、いつもお母さんの優しい鼓動が聞こえていた。 私はあの場所で、ただ愛されるためだけに存在していたんだ。 それって、実はすごく幸せなことなんだよ。
この世に生まれて何十年も生きる人でも、一度も「本当の愛」を知らずに終わる人がいるかもしれない。 でも私は、生まれる前の短い時間で、お母さんから一生分の愛をもらった。 だから、私の人生は短いけれど、完結しているの。欠けているところなんて、ひとつもないんだよ。
天国での私は、とても自由です
こっちの世界では、染色体が一本多いとか、そんなことは関係ありません。 私は今、光のように軽やかで、どこへでも行けるし、何でもわかります。
みんなが美味しいごはんを食べているとき、私は隣でその匂いを楽しんでいるよ。 みんながテレビを見て笑っているとき、私は一緒に笑っているよ。 みんなが夜、眠りにつくとき、私は枕元で「おやすみ」って言っているんだ。
私は、みんなの「心の影」になりたいんじゃない。 みんなを照らす「小さな光」になりたい。 だから、私のことを思い出すときは、どうか苦しい顔をしないで。 「あの子は今、空で元気に遊んでいるんだな」って、少しだけ口角を上げてくれたら、それが私への一番の供養になります。
家族への最後のお願い
最後に、みんなにお願いがあります。
私のために流してくれた涙は、もう十分だよ。 これからは、その涙を、今隣にいる大切な人たちのために使ってあげてね。 お父さんとお母さんが仲良く笑い合っていること。 兄弟が元気に走り回っていること。 それが、私にとっての最大の喜びです。
もし、いつかまた、新しい命が家族に加わることがあったら。 その時は、私の分まで、思いっきり抱きしめてあげてね。 私は嫉妬なんてしないよ。「よかったね、おめでとう」って、空から一番に拍手を送るから。
私は消えてしまったんじゃない。 みんなの心の中にある「優しさの記憶」として、ずっと生き続けるんだ。 何かに迷ったとき、誰かに優しくしたくなったとき、ふと空を見上げたとき。 そこに私がいることを、思い出してね。
二人の子供として宿ることができて、本当に、本当によかった。 短い間だったけれど、親にしてくれてありがとう。 家族にしてくれてありがとう。
私はずっと、みんなの味方です。 世界で一番大好きなお父さん、お母さん、さようなら。 またいつか、光の中で会おうね。
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