1.5倍

トップ > ダウン症の専門的なこと > 1.5倍

三本の21番染色体

タンパク質の合成

ダウン症者の21番染色体は、健常者よりも一本多く、三本ある。それを「トリソミー21」と言う。ダウン症の95%ほどが、このトリソミー21で、その他に、数%の確率で、「転座型」と「モザイク型」と言うものが存在するが、ここでは、簡単の為、トリソミー21をイメージして欲しい。

21番染色体は、22種類ある常染色体(この他に性染色体がある)のうち最も小さく、270の遺伝子が含まれる。含まれる遺伝子が少ないため、他の染色体にくらべ染色体異常の影響が小さく、染色体数に異常が生じた場合でも生存が可能であり、その症状はダウン症として現れる。

生物の遺伝子はDNA という物質でできており、生物のからだを構成し、生命活動の維持に不可欠なタンパク質を合成するための設計図として機能しています。タンパク質を合成するために、細胞はDNA を鋳型(いがた)にして同じ塩基配列を持ったRNA を合成し、RNA の情報をもとにタンパク質を作ります。この「DNA → RNA →タンパク質」という情報の流れ(遺伝子の発現)はすべての生物に共通のメカニズムであり、生命活動の根幹となるものです。

実際に細胞内ではどのようになっているのでしょうか。細胞内の様子を図で示しました。細胞の核内にはDNAが収められています。DNAはとても大切なものなので、核の外に持ち出すことができません。そこで、同じ核酸であるRNAに塩基配列をコピーしますが、これを転写と言います。次に、転写されたRNAが核の外へ移動します。ここで塩基配列が解読され、アミノ酸が組み合わされていくのです。これを翻訳と言います。このようにしてDNAからRNA、タンパク質へと遺伝情報が流れていきます。

問題提起

ここで、一つの仮説が提起される。
21番染色体が一本多いのならば、ダウン症者は、健常者に比べて、21番染色体由来のタンパク質を、1.5倍多く作り出すのかーー。

例えば、髪の毛を作る遺伝子配列が、21番染色体にあったら、髪の毛が、1.5倍伸びるのか?
ダウン症者が、メタボになりがちなのは、21番染色体が、脂肪を多く作り出してしまうからなのか。一方、三本目の21番染色体が、カルシウムや成長ホルモンなどを何かのタンパク質の生成の為に使ってしまうから、背が低くなるのか。

また、ダウン症者は、メタボになりがちだが、考えようによっては、食べる量が少なくても良いのではないか。それは、つまり、ダウン症者は、健常者よりも1.5倍能力を持つと言うことなのではないだろうか。

ーー馬鹿馬鹿しいと思うかも知れないが、これは、事実なのだ。
ただし、おそらく髪の毛の話ではない。

講演

7月9日(木)16時、東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区、宮野健次郎所長)の南敬特任准教授の研究グループが、東京大学先端科学技術研究センター4号館3階317号室で講演を行なった。

■概要

ダウン症は、21番染色体が健常人では2本のところ、1本多い3本(トリソミー)になることが原因で発症し、遺伝病の中では最も高い頻度(700分の1の確率)で発生しています。症状としては、精神遅延が知られていますが、その一方で、これまでの疫学データから、ダウン症患者が固形がん(白血病などの血液がん以外のがん)にかかる率が著しく低く、かつ動脈硬化などの血管性疾患の危険性も、とても低いことが示されていましたが、これまではその原理が不明でした。
 今回の南特任准教授らの研究では、ダウン症候群関連遺伝子 (DSCR-1) が、がんや炎症による血管の異常を察知して活性化すること、そしてDSCR-1がないマウスでは、血管の防護が出来ず、体内に細菌が入る敗血症などのショックを与えると早期に死亡してしまうことを証明し、The Journal of Clinical Investigation(8月号)誌上で発表しました。
 なお、ダウン症に関連する21番染色体が通常の2コピーに対して、ダウン症の場合は3コピーあり DSCR-1 が増えるため、血管新生ができにくく、がんの成長が遅くなることは東京大学とハーバード大学の共同研究による成果として、6月25日付のNature誌で発表されています。

つまり、ダウン症者の特徴を研究することで、21番染色体の作り出すタンパク質が、がんを防ぐことが分かったのだ。

そして、驚くなかれ、この講演は、2009年の話なのだ。

将来、人は、この研究を皮切りに、がんを治すことができるようになるかも知れない。おそらく、そうなるだろう。そして、ダウン症者がいなければ、この研究は、もっと時間がかかっていたことだろう。ダウン症者の存在が、がんを治す一助になったのだ。

自分のがんが治った時。家族のがんが治った時。大切な人のがんが治った時。その時、ダウン症者に少しだけでも感謝して欲しい。「ありがとう」と、心の中で思うだけで良い。それで、社会は、変わる。

参考文献

  1. https://ja.wikipedia.org/wiki/21番染色体_(ヒト)
  2. https://shimasensei.hatenablog.com/entry/2018/03/03/113057
  3. http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_06/
  4. https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/p01_210714.html

免責事項・著作権表示

情報が古かったり、間違っていることなどによる損害の責任は負いかねますので、ご了承ください。

Copyright (C) ダウン症のポータルサイト. All Rights Reserved.